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光と風と、家族の声が響く家

出会い

「"ただいま"と"行ってきます"が交差する家」
お施主様とのご縁は、10年ほど前に奥様のご家族が建てられた一軒の住まいから始まりました。
その家を訪れたときの心地よさが、家づくりを考えるきっかけとなったそうです。
初めて対話をした場面では、家の話にとどまらず、人生の節目や日々の小さな出来事にまで会話が広がり、空間にあたたかな笑いが満ちていた時間が、今でも印象に残っています。
「どこにいても家族の声が届くような、“人”を感じる空間にしたいんです」
そう語られた奥様のまなざしの奥には、家がただの器ではなく、記憶を育む場所であるという強い想いが宿っていました。
光と風が巡り、季節の匂いがふとした瞬間に立ち上るような家。
玄関を開ければ「ただいま」が耳に届き、キッチンの手元からは「行ってきます」が聞こえてくる。
そんな暮らしの情景が、計画のはじまりでした。

計画

「記憶をたどるように、感覚をかたちに」

お施主様が幼少期を過ごされた家には、陸屋根と吹き抜けがあり、空を近くに感じる暮らしがあったそうです。
その記憶に寄り添いながら、今回の住まいにも風や光が自然と入り込む設計を意識しました。
家族の一体感を大切にしたいというご要望に応え、リビングダイニングには勾配天井を採用。
視線が抜けることで、空間にのびやかさが生まれ、会話も自然と広がっていきます。
階段には鉄骨を用い、軽やかに、しかし存在感を持って空間を繋ぐ役割を。
照明計画は、日中の自然光との調和を考慮し、ダウンライトと間接照明をバランスよく配置しました。
ウォルナット色の落ち着きある空間に、光がやわらかく溶け込み、時間帯によって異なる表情を見せてくれます。

完成

「暮らしの中に息づく"ぬくもりの気配"」
過去の記憶と現在の暮らしが静かに重なり合い、この場所に新たな時間が流れ始める。
過去の記憶にある、光、風、音、匂い、そのすべてが暮らしの中に溶け込み、「家族の気配」をやさしく包み込んでくれる住まいとなりました。
これからの日々が、この空間とともに、豊かに育っていくことを願います。

文・koki ogawa

家族構成 ご夫婦+お子様2人(成人)
敷地面積 167.96㎡(50.80坪)
延床面積 133.70㎡(40.44坪)
構造 地下RC造+地上木造2階建て
竣工年月 2018年11月
所在地 東京都杉並区
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